昆布漁
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__________________ 勘と感覚、そして熟練、なにより体力。

沖合いに出ている船上では、場所により2つの漁法を使います。比較的浅いところでは「長しろ」という道具を使い、ねじってからませながら採る漁法。水中機で海中を覗き、昆布の位置を見定めながら引き上げるというものです。海中が見えにくい時は、勘と感覚で山を立てると言います。経験則がなければ“立てられない”、地元の漁師独自の経験則です。
今でこそ長しろに機械が付いていて、比較的らくに引き上げることができますが、昔は人手でぐいっとひねりながら船上まで昆布を引き上げていたといいます。

もう一方、昆布の生息する位置が深くなる沖合いの遠方では、漁法が「鍵ひき」に変わります。鉄で出来ている錨のようなものに、鉛の付いたロープを海底に投げ、船底を加減しながら船ごと引っ張り、それを巻き上げて船に乗せます。
「深いところは仕事もゆるぐない」。 −こちらもまた、熟練した技が必要になる漁法なのです。

昆布漁

___________________________________ 広大なで働くということ

女性の漁師さんに出会い、船に乗せてもらいました。橘 淳子(たちばなじゅんこ)さん、53歳。市内のガソリンスタンドに勤めていた時分から、出勤前の早朝に手伝いはしていたそうですが、専業になったのは5年前。「小さい頃から、船サは乗ってるし、ずっと手伝ってきたから、なんも特別なことじゃないのさ」と話します。

今は、体が不自由になり漁が出来なくなった父親が船を操り、淳子さんが漁を担当します。
実際、父さんと母さんそして息子と、親子で漁に出ている船も多いそうです。が、その場合の“母さん”は、採ったばかりの昆布に付いている石や海藻を取り除いたりする役目。女性が道具を扱い一人前に漁をする例は、ほとんどないと聞きます。実際、普通でも2mくらいの長さがある、水を含んだ生の昆布はやはり重く、機械が助けてくれたとしても、それなりに力は要るはずです。

漁の船を降りてから、たいへんなこの仕事に専念しようと思ったのは? と淳子さんに訊ねてみました。もちろん、跡継ぎとしてという事情があったのかもしれません。が、「海に出てみてわかったっしょ」と、真っ黒に日焼けした笑顔が、とてもすっきりとそう答えます。

― たしかに。
“空と海に囲まれた”そんな魅力ある職場は、他を探してもありません。自然と真っ向から向き合う“漁”という仕事――、その潔さ、そして尊い仕事に、その答えは言葉で聞かなくともわかった気がしました。

「続けるよー、漁師をー!」と、なんとも頼もしくうれしい言葉ももらいました。数年後にまた、ぜひ船に乗せてもらいたい、そう思った夏の一日でした。

(取材・文/山本直美)

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