たらこ 八島商店

「食の現場は、信頼関係が大事です」

「たらこ」は、添加物が多く含まれているワースト食品にも選ばれている加工品で、事情をご存知の方ならば、食べたくても買い渋っているのが現状かもしれません。作り手側からすると、魚卵の加工には添加物が不可欠で「いたしかたない」いう考えが、ひとつの社会通念のように横行している事実もまたあるのかもしれません。

函館には、「たらこ」を始め「いくら」や「数の子」など、いずれも無添加無漂白で作り販売する八島商店があります。食の現場を真摯に捉え、添加物や化学薬品不使用にこだわり続ける店主、大島智子さんにお話をうかがいました。

たらこ 八島商店

今もつながりのある顧客のみなさんは、それぞれに“食”に対する意識の高い方たちで、
「今回のは塩が少し甘かった」などの、声を届けてくれるお客様でもありました。国産のスケトウ鱈が品薄な時には、「ロシア海域を漁場にする北転船のような底引き網漁船で、根こそぎ獲ってきたようなものは使わないでくれ」と言われたこともあったと言います。それでも、「八島さんをつぶしたら、わたしたちが食べられる『たらこ』がなくなると、どんな時でも、買い支えてくれたんです」と言います。
13年前に函館に戻った大島さんは、作り手であったお母様が遺してくれたレシピを元に、時々で材料を見直しながら現在まで、信頼する地元の業者に加工を委託し作り続けています。

たらこ 八島商店

「わたし、野菜のこと、すごく詳しいんですよ」と大島さんは話します。
東京時代に4人の子連れで離婚した後、逗子に移り住み、繋がりのあった人の伝手を頼りに「ワゴン車で売り歩く有機栽培の八百屋さんを始めたんです」と。
子育てのかたわら、販路を少しづつ広げながら、その後には店を構え、18年間続けたそうです。女性が卸売市場に出入りすることなどなかった時代に、セリにも立ったといいます。野菜の目利きにかけてはプロなのです。子供の誕生をきっかけに始まった“食”への意識が、その生活の中で、そして仕事を通して、深まっていったのです。

「今はね、無農薬や無添加という以前に、物事が循環していない社会だと思うの。今の食品業者というのは、食中毒を出さないようにいうことに必死になってて……。そういう合理的、効率的な社会というのはどこかに無理が生じる……。社会全体が循環するものであれば、どこにも無理を強いられることなく、みんなしあわせになると思うの。
うちの店で作って売るものは、すべて製造工程から化学薬品を垂れ流さないという姿勢でやってきてるの。もちろんこれからもね。自分個人でもそれを実践したくて、4年前から畑もやってるんです。家から出るゴミや、知り合いの養鶏場から卵を買いながら鶏糞もいただいてね、それを土に還しながら、野菜を作ろうと思って。小さくても。無駄なく回っているというのはすごく幸せなことだと思うんです」。

たらこ 八島商店

大島さんとの会話は、店の「たらこ」の話から、どんどん広がっていきました。というのも「添加しない」という話の本筋が、そこに行き着いたのです。
「食の現場は、信頼関係が大事」と大島さんは言います。賛同者が集まる共同購入のような形で始まった八島商店。その根底には、今も変わらずに「安心で安全で、おいしいものを届ける」という思いがあるのだなと思いました。

たらこ 八島商店

(取材・文/山本直美)

八島商店 | 函館市元町32-20 | 0138-23-1703 | http://yashimashoten.jp/